僕と影月凛音の怪異談【マウンテンキャット】の章

弐話 季節外れ?の転校生

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 あの奇妙な出来事から早くも一週間。未だにあの少女には会えていない。あれは夢だったのか、と問われたらそれは違う。現実だと僕ははっきりそう断言できる。
 恐らく、悪霊とかそういった類のモノに取り憑かれたと思われたあの幼き少女『猫間海』には先日会い、名前と共にお礼を言われた。どうやら海の記憶の中では僕は彼女を家まで運んだ青年となっているらしい。
 少女の母親からは怪しげな目で見られた。それもそうだろう。たった二回しか会っていない人の家を知っている僕のことは、娘を狙う不審者に見えるのだろう。僕が母親だったらそうとしか思えない。まあ、あの後僕が不審な人でもロリコンでもない事を分かってもらえる様に説明はしたので恐らく大丈夫だろう。
 閑話休題。それはそれ、と置いといて。まあ、最初にも言ったとおり、僕はあの黒い髪の不思議な雰囲気を醸し出すあの少女には未だ会えていない。僕としては彼女にしっかりと感謝の意を伝えたいのだが。彼女がいなければ、今ここに僕は居ないだろうし。
「めいよー。暇」
「伸ばして呼ぶな。中国の言葉みたいだから」
「だってー、暇なんだもん。後ーそれは、中国への偏見だと思うー」
「もんとか言うなよ。お前は女か。まあ、確かに偏見だとは思うが」
「女じゃないもん。今時もんぐらい誰でも使うしー」
 さっきから僕と話している間延びした喋り方をするこの青年は、【犬井春】と言い、親の一方が外国人という訳でもないのに地毛が金髪。目の色も青色で見た目だけならば女子にモテモテになりそうなイケメンである。
 ……そう。本当に見た目だけならば引き取り手多数な奴である。僕も最初は見た目に騙されたものだ。アニメや漫画の世界から出てきたような、輝く金色の髪に綺麗な宝石と見間違う青色の瞳に陶器製の人形のように透き通る肌。本当に騙された。彼を見た時の僕の第一感想は『乙女ゲームの攻略キャラか?』であった。
 まあ、彼自身は俗に言う残念なイケメンであったため、彼に言い寄ろうとしていた女子は一瞬で冷めた。でも憎めない奴ではあるので、クラスの中心人物ではある。
「でさー、明陽。昨日やっと欲しかったものが出たんだー」
「そうか。んで、発売してすぐに買ったのか」
「そうに決まってるでしょ。にしてもなかなか良かった。新楽先生の『巫女様は働かない』二巻と各店舗の限定品のおまけ。わざわざ自分の脚力とお年玉を使った甲斐があったよ。特にオススメだったのがさ、主人公のライバルポジションの子が初登場の回だったんだけど……」
「ストップ。春。ネタバレはやめろ」
「あ、ごめん」
 おお、珍しい間延び無しの喋りだ。これは相当良かった品だったのだろう。この田舎街から全国の店を一日でどうやって制覇したのかは想像がつかないが、彼の制覇の仕方はそういう物なので気にする方がいけないのだろう。
 ちなみに、彼は二次元も三次元もこよなく愛するオタクである。僕の妹に引けを取らないレベルで。
 ……今年で彼と会って三年になるが、謎が多すぎる。本当に気になる。でも気にしたら駄目だ。
「明陽」
 顔、こっちに持ってきて、と言うのでそれに従う。僕が彼に顔を近づけると彼は僕の頬を舐めた。ハム、と聞こえたことから何かを舐めとったと思われる。
 最初こそ、驚いたものだが、もう三年になるので今更吃驚はしない。迷惑だが。コイツが女、もしくは僕が女だったら嫉妬の嵐だっただろう。
「はあ……春。いい加減にその人の頬舐める癖直せ」
「やだ。それに今のはー明陽のほっぺたに米粒が付いてたからだし、明陽以外には……」
 と、間をあける。
「弟にしかやってないもん」
「おい、夏くん本気で逃げろ。てか、お前。僕相手には米粒が付いてなくてもやる時があるだろ」
 その言葉に反応したのか、今年から新しく同じクラスになったクラスメイトがガタっと音を立てて立ち上がったり、バッと勢いよくこちらを見たりするがお生憎、僕達はそういう関係ではない。一度は同じクラスになった奴らは無視を決め込んでいるが、やはり数人メモ帳を片手にニヤついている。
「ちょっと、アンタ達!」
 ふと、声のした方に目をやると、そこにはツインテールの眼鏡をかけた幼い風貌をした少女が居た。影ではロリ眼鏡と呼ばれていたりする。委員長である事を含め、ロリ委員長と言われてりもする。ちなみに本名は【夢野花奏】という。
「んー? ああ、委員長ー。何の用ー?」
「用も何も、アンタ達二人が進級してから、毎日毎日、同じ内容で飽きずに騒いでるからでしょうが!」
「えー。でも他の人達も騒いでるじゃんか。同じような内容でー」
「内容が不健全なのよ! てか、尋もコイツ止めなさいよ!」
「春は何言ってもやめないから無理。口煩いロリ眼鏡が言っても効かないんだよ?」
「諦めるんじゃないわよ! て、アタシアンタ達にそう呼ばれてたの!? 人が気にしてることを……」
 別に、貶してるわけではないんだけどな。クラスでドア係に自然となってる森が委員長はロリで眼鏡だが俺好みと、宣言していたし。多分褒め言葉だ。
「ま、まあ。今回話してる内容とは関係無いから、置いとくわよ。でも、本当に控えときなさいよ。ホモホモしい事をするのは」
「んー。考えとくー」
「考えとくじゃなくってだな……」
「犬井、ホントにアンタって奴は……」
 僕と委員長が同時に溜息をつく。委員長は呆れ顔のまま、自分の席に戻ってしまった。犬井はずっと僕の方に体を向けていたが、スマホで時間を確認した後、体を前の方へと向ける。僕はそのまま、前の方を向く。
 始業のベルが鳴る。今日は確か、一時間目は国語だから、担任の先生がそろそろやって来る筈だ。
 カツカツ、とヒールの高い靴が奏でる音が聞こえるので、先生が近づいてきてるのだろう。ただ、その足音に合わせて、もう一つの足音が聞こえる。
 ガラガラ、と音を立て、ドアを閉めずに先生は教室に入ってきた。
「あー、こんなクソ面倒くさい時期だが、喜べお前ら。転入生がやって来たぞ」
 先生がそう言うと、周囲の人々はざわざわと騒ぎ出す。女か、男かだとか、そんなこと。
 クラスの意見を代表するかのように、夢野がどういう子か、と質問する。
「あ? んなの、入ってきた本人と顔合わせして、喋ってもらったら分かるだろ。てことで、影月。入ってこい」
 先生が面倒くさそうに答える。先生の声に合わせ、転校生が入ってくる。
「初めまして。光明中学からやって来ました。影月凛音です。よろしくお願いします」
 僕は転校生――影月凛音の姿を見て、驚きを隠せなかった。何故なら、僕があの奇妙な出来事に遭った時、助けてくれた少女その人だったからだ。
 青みがかった黒髪。春とは違う、ルビーみたいな色をした瞳。色白で、今まで日に焼けた事のなさそうな綺麗な肌。こんな美しい人が2人もいるものか? いや、春もそんな感じだけど。
「影月は家庭の事情とやらで、こんな中途半端な時期に転校という形になったが、まあ皆仲良くしてやれ。夢野、影月の面倒、見てくれよ。んで、席は――」
「明陽……あの窓際のガキの隣の席だ」
 今一瞬だけ、クラスの男子から憎しみを込めた目で見られた気がする。
「はい。有難うございます。先生」
 影月が僕の隣の席まで来る。そのまま彼女は席に着く……かと思われた、が。
 何故か、彼女は席に座らず、僕の目の前に立ち止まり、深呼吸をし始めた。あの、席座ってください。
「あ、あの影月さん」
「さん付けじゃなくっていい。明陽」
「あ、そう。あの、この前は有難う」
「礼には及ばん。ただ私のするべき事をやっただけだ」
 スーハー、とまた深呼吸をする。本当、早く席に着かないかな? 先生が早よ座れやクソガキっていう目で見てるんですけど!
「明陽、私とお付き合いを前提に結婚してくれ」
 彼女が衝撃発言をした瞬間。クラスメイト達の中での時間は、止まったのか動かなくなり、真顔になり、そのすぐあとに、三年三組の教室どころか、学校全体に叫び声が響き渡った。
 影月さん、僕に平穏な日常生活を返してください。
 あと、順序が逆です。それ。

――あとがき――
お久しぶりの更新となります。日谷真冬です。
さて、第二話ですが衝撃?のラストでしたね。物語モチーフっていったのに全然違うって?
じゃあ、主人公に初っ端からホッチキス向けるヒロインもう一人いります?
まあ、今回だけで個性豊かな子、たくさんでてきましたね。
委員長こと【夢野花奏】―ユメノカナデ―ちゃんはこの章でも二章【スプリングドッグ】でも活躍しないんでまだ立ち絵なしでいいですよね。  

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